

第10話:仕事のミスと天ぷらの味
月曜日の朝。エイダンさんは、いつものように会社に行きました。
デスクに座って、パソコンを開きました。今週は、新しいシステムのテストをする予定です。
金曜日に提出したレポートについて、山田課長からメールが来ていました。
「エイダンさん、金曜日のレポートですが、データに誤りがあったようです。後で確認してもらえますか」
エイダンさんは、レポートを開いて確認しました。
データの一部を、間違えて入力していました。大きな問題ではありませんが、修正が必要です。
すぐに修正して、山田課長に報告しました。
「申し訳ありませんでした。データを間違えていました。修正しました」
「大丈夫です。確認しました。次から気をつけてください」
山田課長は優しく言いましたが、エイダンさんは、少し落ち込みました。
日本に来てから、できるだけ丁寧に仕事をしてきたつもりでした。でも、ミスをしてしまいました。
昼休み。田中さんが話しかけてきました。
「エイダンさん、お昼、一緒に食べませんか」
「あ、すみません。今日は、あまり食欲がないので...」
エイダンさんは、デスクに一人で残りました。
午後の仕事も、なかなか集中できませんでした。
夕方、会社を出ました。
部屋に帰ってから、スマートフォンを見ると、アメリカの家族から写真が送られてきていました。両親と弟が、庭でバーベキューをしている写真です。
「みんな、楽しそう...」
エイダンさんは、家族のことを思い出しました。
アメリカにいた頃は、週末になると、よく家族でバーベキューをしました。父が肉を焼いて、母がサラダを作って、弟と一緒にビールを飲みました。
東京での生活は楽しいです。でも、時々、とても寂しくなります。
水曜日の夜。マユさんからメッセージが来ました。
「エイダンさん、こんばんは。元気ですか」
エイダンさんは、少し考えてから、返信しました。
「こんばんは。元気です」
すぐにまた、メッセージが来ました。
「本当に大丈夫ですか。なんだか、元気がないように感じます」
エイダンさんは驚きました。メッセージだけで、よく分かるなと思いました。
「実は、仕事で小さなミスをしてしまって、少し落ち込んでいます。それに、家族のことを思い出して、ホームシックになっています」
しばらくして、返信が来ました。
「そうだったんですね。よかったら、明日の夜、一緒に食事に行きませんか。元気が出るものを食べに行きましょう」
「本当ですか。ありがとうございます」
「じゃあ、明日の7時に、新宿駅の東口で会いましょう」
「はい。楽しみにしています」
木曜日の夜。約束の7時。
新宿駅の東口で、マユさんと会いました。
二人は、駅から少し歩いて、小さな店に入りました。
「天ぷら さくら」という名前の店です。
店に入ると、カウンター席がありました。
カウンターの向こうには、板前さんが立っていました。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは。二人です」
「どうぞ、こちらへ」
二人は、カウンターに座りました。
「天ぷらは、好きですか」
マユさんが聞きました。
「アメリカで、何回か食べたことがあります。でも、専門店は初めてです」
メニューを見ました。いろいろな種類の天ぷらがありました。
「おまかせコース をお願いできますか」
マユさんが注文しました。
しばらくすると、板前さんが、目の前で天ぷらを揚げ始めました。
まず、エビの天ぷらが出てきました。
「どうぞ、揚げたてです」
「いただきます」
エイダンさんは、天ぷらを一口食べました。
「おいしい...」
衣はサクサクで、エビはプリプリしていました。今まで食べた天ぷらの中で、一番おいしいです。
次に、野菜の天ぷらが出てきました。なす、かぼちゃ、しいたけ。
一つずつ、ゆっくり食べました。
「かぼちゃが、こんなに甘いんですね」
「そうなんです。揚げると、野菜がもっと甘くなるんです」
板前さんが、次々と天ぷらを揚げてくれました。
白身魚、アナゴ、れんこん。
「この白身魚は、キスという魚ですよ。」
「そうですか。ふわふわしていて、おいしいですね。」
食べながら、二人は話しました。
「仕事のミス、大したことなかったんですよね」
「はい。すぐに修正しました。でも、恥ずかしくて...」
「誰でも、ミスはしますよ。エイダンさんは、すぐに、対応したんだから、大丈夫です」
「ありがとうございます」
「それに、家族のこと、寂しいですよね」
「はい。写真を見たら、急にホームシックになってしまいました」
「それは、当然だと思います。でも、家族は、エイダンさんが東京で頑張っていることを、きっと誇りに思っていますよ」
マユさんの言葉を聞いて、うれしくなりました。
最後に、かき揚げが出てきました。小エビといろいろな野菜が入っています。
「マユさん、どうして、僕が元気がないって、分かったんですか」
「メッセージが、いつもと違った感じがしたんです」
店を出て、駅まで歩きました。でも、二人とも、すぐに改札に入りませんでした。
「マユさん、今日、本当にありがとうございました。マユさんがいてくれて、よかったです」
二人は、しばらく黙って立っていました。
別れるとき、マユさんがエイダンさんの手に、そっと触れました。
「元気出してくださいね」
その瞬間、エイダンさんの心が、温かくなりました。
家に帰ってから、今日のことを思い出しました。天ぷらの味、マユさんの優しい言葉、そして、あの手の温もり。
スマートフォンを見ると、マユさんからメッセージが来ていました。
「今日は、エイダンさんの顔が見られて、よかったです。おやすみなさい」
エイダンさんは、返信しました。
「マユさんのおかげで、元気が出ました。どうもありがとう。おやすみなさい」
メッセージを送ってから、エイダンさんは気づきました。
マユさんは、ただの友達じゃない。
京都で感じた気持ちは、やっぱり、恋だったんだ。
エイダンさんは、ドキドキして、なかなか眠れませんでした。
明日からまた、頑張ろう。そして、マユさんともっと一緒にいたい。
そう思いました。
Hiragana Version
第10話:仕事のミスと天ぷらの味(ひらがな)
げつようびのあさ。エイダンさんは、いつものようにかいしゃにいきました。
デスクにすわって、パソコンをひらきました。こんしゅうは、あたらしいシステムのテストをするよていです。
きんようびにていしゅつしたレポートについて、やまだかちょうからメールがきていました。
「エイダンさん、きんようびのレポートですが、データにあやまりがあったようです。あとでかくにんしてもらえますか」
エイダンさんは、レポートをひらいてかくにんしました。
データのいちぶを、まちがえてにゅうりょくしていました。おおきなもんだいではありませんが、しゅうせいがひつようです。
すぐにしゅうせいして、やまだかちょうにほうこくしました。
「もうしわけありませんでした。データをまちがえていました。しゅうせいしました」
「だいじょうぶです。かくにんしました。つぎからきをつけてください」
やまだかちょうはやさしくいいましたが、エイダンさんは、すこしおちこみました。
にほんにきてから、できるだけていねいにしごとをしてきたつもりでした。でも、ミスをしてしまいました。
ひるやすみ。たなかさんがはなしかけてきました。
「エイダンさん、おひる、いっしょにたべませんか」
「あ、すみません。きょうは、あまりしょくよくがないので...」
エイダンさんは、デスクにひとりでのこりました。
ごごのしごとも、なかなかしゅうちゅうできませんでした。
ゆうがた、かいしゃをでました。
へやにかえってから、スマートフォンをみると、アメリカのかぞくからしゃしんがおくられてきていました。りょうしんとおとうとが、にわでバーベキューをしているしゃしんです。
「みんな、たのしそう...」
エイダンさんは、かぞくのことをおもいだしました。
アメリカにいたころは、しゅうまつになると、よくかぞくでバーベキューをしました。ちちがにくをやいて、ははがサラダをつくって、おとうとといっしょにビールをのみました。
とうきょうでのせいかつはたのしいです。でも、ときどき、とてもさびしくなります。
すいようびのよる。マユさんからメッセージがきました。
「エイダンさん、こんばんは。げんきですか」
エイダンさんは、すこしかんがえてから、へんしんしました。
「こんばんは。げんきです」
すぐにまた、メッセージがきました。
「ほんとうにだいじょうぶですか。なんだか、げんきがないようにかんじます」
エイダンさんはおどろきました。メッセージだけで、よくわかるなとおもいました。
「じつは、しごとでちいさなミスをしてしまって、すこしおちこんでいます。それに、かぞくのことをおもいだして、ホームシックになっています」
しばらくして、へんしんがきました。
「そうだったんですね。よかったら、あしたのよる、いっしょにしょくじにいきませんか。げんきがでるものをたべにいきましょう」
「ほんとうですか。ありがとうございます」
「じゃあ、あしたの7じに、しんじゅくえきのひがしぐちであいましょう」
「はい。たのしみにしています」
もくようびのよる。やくそくの7じ。
しんじゅくえきのひがしぐちで、マユさんとあいました。
ふたりは、えきからすこしあるいて、ちいさなみせにはいりました。
「てんぷら さくら」というなまえのみせです。
みせにはいると、カウンターせきがありました。
カウンターのむこうには、いたまえさんがたっていました。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは。ふたりです」
「どうぞ、こちらへ」
ふたりは、カウンターにすわりました。
「てんぷらは、すきですか」
マユさんがききました。
「アメリカで、なんかいかたべたことがあります。でも、せんもんてんははじめてです」
メニューをみました。いろいろなしゅるいのてんぷらがありました。
「おまかせコース をおねがいできますか」
マユさんがちゅうもんしました。
しばらくすると、いたまえさんが、めのまえでてんぷらをあげはじめました。
まず、エビのてんぷらがでてきました。
「どうぞ、あげたてです」
「いただきます」
エイダンさんは、てんぷらをひとくちたべました。
「おいしい...」
ころもはサクサクで、エビはプリプリしていました。いままでたべたてんぷらのなかで、いちばんおいしいです。
つぎに、やさいのてんぷらがでてきました。なす、かぼちゃ、しいたけ。
ひとつずつ、ゆっくりたべました。
「かぼちゃが、こんなにあまいんですね」
「そうなんです。あげると、やさいがもっとあまくなるんです」
いたまえさんが、つぎつぎとてんぷらをあげてくれました。
しろみざかな、アナゴ、れんこん。
「このしろみざかなは、キスというさかなですよ。」
「そうですか。ふわふわしていて、おいしいですね。」
たべながら、ふたりははなしました。
「しごとのミス、たいしたことなかったんですよね」
「はい。すぐにしゅうせいしました。でも、はずかしくて...」
「だれでも、ミスはしますよ。エイダンさんは、すぐに、たいおうしたんだから、だいじょうぶです」
「ありがとうございます」
「それに、かぞくのこと、さびしいですよね」
「はい。しゃしんをみたら、きゅうにホームシックになってしまいました」
「それは、とうぜんだとおもいます。でも、かぞくは、エイダンさんがとうきょうでがんばっていることを、きっとほこりにおもっていますよ」
マユさんのことばをきいて、うれしくなりました。
さいごに、かきあげがでてきました。こエビといろいろなやさいがはいっています。
「マユさん、どうして、ぼくがげんきがないって、わかったんですか」
「メッセージが、いつもとちがったかんじがしたんです」
みせをでて、えきまであるきました。でも、ふたりとも、すぐにかいさつにはいりませんでした。
「マユさん、きょう、ほんとうにありがとうございました。マユさんがいてくれて、よかったです」
ふたりは、しばらくだまってたっていました。
わかれるとき、マユさんがエイダンさんのてに、そっとふれました。
「げんきだしてくださいね」
そのしゅんかん、エイダンさんのこころが、あたたかくなりました。
いえにかえってから、きょうのことをおもいだしました。てんぷらのあじ、マユさんのやさしいことば、そして、あのてのぬくもり。
スマートフォンをみると、マユさんからメッセージがきていました。
「きょうは、エイダンさんのかおがみられて、よかったです。おやすみなさい」
エイダンさんは、へんしんしました。
「マユさんのおかげで、げんきがでました。どうもありがとう。おやすみなさい」
メッセージをおくってから、エイダンさんはきづきました。
マユさんは、ただのともだちじゃない。
きょうとでかんじたきもちは、やっぱり、こいだったんだ。
エイダンさんは、ドキドキして、なかなかねむれませんでした。
あしたからまた、がんばろう。そして、マユさんともっといっしょにいたい。
そうおもいました。
English Translation
Episode 10: A Work Mistake and the Taste of Tempura (English Translation)
Monday morning. Aidan went to work as usual.
He sat at his desk and opened his computer. This week, he was scheduled to test a new system.
He had received an email from Manager Yamada about the report he had submitted on Friday.
"Aidan-san, regarding Friday's report, it seems there was an error in the data. Could you check it later?"
Aidan opened the report and checked it.
He had entered part of the data incorrectly. It wasn't a big problem, but it needed to be corrected.
He immediately corrected it and reported to Manager Yamada.
"I'm sorry. I made a mistake in the data. I've corrected it."
"It's okay. I've confirmed it. Please be careful from now on."
Manager Yamada said kindly, but Aidan felt a bit down.
Since coming to Japan, he had been trying to work as carefully as possible. But he had made a mistake.
Lunchtime. Tanaka-san came to talk to him.
"Aidan-san, would you like to have lunch together?"
"Ah, I'm sorry. I don't have much appetite today..."
Aidan remained alone at his desk.
He couldn't concentrate well on his work in the afternoon either.
In the evening, he left the company.
After returning to his room, when he looked at his smartphone, photos had been sent from his family in America. It was a photo of his parents and younger brother having a barbecue in the yard.
"Everyone looks so happy..."
Aidan remembered his family.
When he was in America, on weekends, they would often have barbecues together as a family. His father would grill the meat, his mother would make salad, and he would drink beer with his younger brother.
Life in Tokyo is fun. But sometimes, he feels very lonely.
Wednesday night. A message came from Mayu-san.
"Aidan-san, good evening. How are you?"
Aidan thought for a moment before replying.
"Good evening. I'm fine."
Soon, another message came.
"Are you really okay? Somehow, I feel like you don't have energy."
Aidan was surprised. He thought it was impressive that she could tell just from a message.
"Actually, I made a small mistake at work and I'm feeling a bit down. Also, I remembered my family and I'm feeling homesick."
After a while, a reply came.
"I see. If you'd like, shall we go out to eat tomorrow night? Let's go eat something that will cheer you up."
"Really? Thank you."
"Then, let's meet at 7 PM tomorrow at the east exit of Shinjuku Station."
"Yes. I'm looking forward to it."
Thursday night. The promised 7 PM.
He met Mayu-san at the east exit of Shinjuku Station.
The two walked a bit from the station and entered a small restaurant.
It was a restaurant called "Tempura Sakura."
When they entered the restaurant, there were counter seats.
Behind the counter, a chef was standing.
"Welcome."
"Good evening. Two people."
"Please, this way."
They sat at the counter.
"Do you like tempura?"
Mayu-san asked.
"I've eaten it a few times in America. But this is my first time at a specialty restaurant."
They looked at the menu. There were various types of tempura.
"Could we please have the chef's selection course?"
Mayu-san ordered.
After a while, the chef began frying tempura right in front of them.
First, shrimp tempura came out.
"Here you are, freshly fried."
"Thank you for the meal."
Aidan took a bite of the tempura.
"Delicious..."
The batter was crispy, and the shrimp was plump. It was the most delicious tempura he had ever eaten.
Next, vegetable tempura came out. Eggplant, pumpkin, shiitake mushrooms.
They ate them one by one, slowly.
"The pumpkin is so sweet."
"That's right. When you fry it, the vegetables become even sweeter."
The chef kept frying tempura for them one after another.
White fish, conger eel, lotus root.
"This white fish is called kisu."
"I see. It's fluffy and delicious."
While eating, the two talked.
"The work mistake wasn't a big deal, right?"
"Yes. I corrected it right away. But I was embarrassed..."
"Everyone makes mistakes. Aidan-san, you dealt with it right away, so it's okay."
"Thank you."
"Also, about your family, you must miss them."
"Yes. When I saw the photo, I suddenly became homesick."
"That's natural, I think. But your family is surely proud that you're working hard in Tokyo."
Hearing Mayu-san's words, he felt happy.
Finally, kakiage came out. It had small shrimp and various vegetables in it.
"Mayu-san, how did you know I wasn't feeling well?"
"The message felt different from usual."
They left the restaurant and walked to the station. But neither of them entered the ticket gate right away.
"Mayu-san, thank you so much for today. I'm glad you were here."
The two stood silently for a while.
When they were parting, Mayu-san gently touched Aidan's hand.
"Please cheer up."
In that moment, Aidan's heart became warm.
After returning home, he remembered today's events. The taste of tempura, Mayu-san's kind words, and the warmth of that hand.
When he looked at his smartphone, there was a message from Mayu-san.
"I'm glad I could see your face today. Good night."
Aidan replied.
"Thanks to you, Mayu-san, I cheered up. Thank you very much. Good night."
After sending the message, Aidan realized.
Mayu-san isn't just a friend.
The feelings he had in Kyoto were, after all, love.
Aidan's heart was racing and he couldn't fall asleep easily.

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