

第6話:初めての「飲み会」
金曜日の午後5時。エイダンさんは、今週の仕事を終えて、パソコンを閉じようとしていました。
その時、隣のデスクの田中さんが声をかけてきました。
「エイダンさん、今日、予定ありますか」
「いえ、特にないですけど…」
「よかった!今日、部署のみんなで飲み会をするんです。エイダンさんも一緒にどうですか」
エイダンさんは、少し考えました。飲み会という言葉は聞いたことがあります。でも、まだ参加したことはありません。
エイダンさんは答えました。
「はい、ぜひ参加させてください」
「やった!じゃあ、6時に1階のロビーで集合です」
午後6時。エイダンさんは、1階のロビーへ降りました。田中さん、佐藤さん、伊藤さん、そして課長の山田さんが待っていました。
みんなで、駅の近くの居酒屋へ向かいました。
中に入ると、店員さんが元気よく言いました。
「いらっしゃいませ!何名様ですか」
「5人です。山田で予約しています」
「山田様ですね。こちらへどうぞ」
案内されたのは、畳のスペースでした。みんな靴を脱いで、座布団の上に座りました。
テーブルの上には、メニューと、小さいおしぼりが置いてあります。
「飲み物、何にしましょうか」
山田課長が言いました。
「とりあえず、生ビールで!」
田中さんと佐藤さんが、ほぼ同時に言いました。
「エイダンさんは、ビール大丈夫ですか」
「はい、ビール、好きです」
「じゃあ、生ビール5つ」
山田課長が、店員さんに注文しました。
すぐに、大きなジョッキに入った冷たいビールが5つ運ばれてきました。
「じゃあ、今週もお疲れ様でした。乾杯!」
「乾杯!」
「ああ、金曜日のビールは最高だね!」
「本当に。今週は忙しかったですからね」
佐藤さんも、リラックスした顔で言いました。
エイダンさんは、少し驚いていました。オフィスでは、みんなきちんとした服を着て、丁寧な言葉で話していました。でも、ここでは、ネクタイを緩めて、もっとカジュアルな雰囲気です。
「じゃあ、料理を頼みましょう」
伊藤さんがメニューを開きました。
「エイダンさんは、何か食べられないものはありますか」
「いえ、なんでも食べられます」
「よかった!じゃあ、いろいろ頼みますね」
料理が次々と運ばれてきました。枝豆、焼きナス、揚げ豆腐、から揚げ、焼き鳥。
「エイダンさん、焼き鳥、初めてですか」
「はい、食べたことないです」
「じゃあ、これ、ぜひ食べてみて。ねぎま、っていうんです。鶏肉とねぎが交互に刺さってるんですよ」
エイダンさんは、焼き鳥を一口食べました。
「おいしい!」
「でしょう?この店の焼き鳥は、本当においしいんです」
みんなで料理を食べながら、話が弾みました。仕事の話、週末の予定、趣味の話。
「エイダンさん、次、何飲みますか」
「あ、僕は、またビールをお願いします」
「じゃあ、瓶ビール頼みましょうか。僕はハイボールにしようかな」
しばらくして、瓶ビールとハイボールが運ばれてきました。
田中さんは瓶を手に取って、エイダンさんのグラスにビールを注ぎ始めました。
「あ、ありがとうございます」
エイダンさんは少し驚きました。アメリカでは、みんな自分で自分の飲み物を注ぎます。
「日本では、お互いに飲み物を注ぎ合うんですよ。お酌、って言います」
伊藤さんが、説明してくれました。
「そうなんですか」
エイダンさんは、瓶を取って、田中さんのグラスにゆっくり注ぎました。
山田課長が、エイダンさんに話しかけました。
「エイダンさん、東京の生活には、もう慣れましたか」
「はい。最初は、いろいろ大変でしたけど、今は少しずつ慣れてきました。みなさんが、いつも親切に教えてくれるので、とても助かっています」
「それはよかった。エイダンさんは日本語がとても上手ですね」
「ありがとうございます。でも、まだまだ勉強しなければなりません」
「謙虚でいいですね。でも、本当に頑張ってますよ。私たちも、エイダンさんと一緒に働けて嬉しいです」
山田課長の言葉に、エイダンさんは心が温かくなりました。
時間が経つのは早く、気づくと、もう9時を過ぎていました。
「そろそろ、お開きにしましょうか」
山田課長が言いました。
「じゃあ、お会計お願いします」
山田課長が、店員さんを呼びました。
会計の時、エイダンさんは財布を出そうとしましたが、山田課長が手を振りました。
「今日は、私が出しますよ。歓迎会みたいなものですから」
「でも…」
「いいんです。次の機会に、みんなで割り勘にしましょう」
「ありがとうございます」
居酒屋を出ると、外は少し涼しくなっていました。
「今日は、本当に楽しかったです」
エイダンさんが言いました。
「こちらこそ。また、飲みに行きましょう!」
田中さんが答えました。
「はい、ぜひ!」
駅まで一緒に歩きながら、エイダンさんは思いました。
仕事の時は、みんな真面目で、少し距離を感じていました。でも、今日の飲み会で、みんなの違う一面が見えました。笑顔で話して、冗談を言って、リラックスしていました。
駅で、みんなと別れました。
「お疲れ様でした!また月曜日に!」
「お疲れ様でした。また来週!」
帰りの電車の中で、エイダンさんは窓の外を見ました。東京の夜の景色が、いつもより少し明るく見えました。
「次の飲み会も、楽しみだな」
Hiragana Version
きんようびのごご5じ。エイダンさんは、こんしゅうのしごとをおえて、パソコンをとじようとしていました。
そのとき、となりのデスクのたなかさんがこえをかけてきました。
「エイダンさん、きょう、よていありますか」
「いえ、とくにないですけど…」
「よかった!きょう、ぶしょのみんなでのみかいをするんです。エイダンさんもいっしょにどうですか」
エイダンさんは、すこしかんがえました。のみかいということばはきいたことがあります。でも、まださんかしたことはありません。
エイダンさんはこたえました。
「はい、ぜひさんかさせてください」
「やった!じゃあ、6じに1かいのロビーでしゅうごうです」
ごご6じ。エイダンさんは、1かいのロビーへおりました。たなかさん、さとうさん、いとうさん、そしてかちょうのやまださんがまっていました。
みんなで、えきのちかくのいざかやへむかいました。
なかにはいると、てんいんさんがげんきよくいいました。
「いらっしゃいませ!なんめいさまですか」
「5にんです。やまだでよやくしています」
「やまださまですね。こちらへどうぞ」
あんないされたのは、たたみのスペースでした。みんなくつをぬいで、ざぶとんのうえにすわりました。
テーブルのうえには、メニューと、ちいさいおしぼりがおいてあります。
「のみもの、なににしましょうか」
やまだかちょうがいいました。
「とりあえず、なまビールで!」
たなかさんとさとうさんが、ほぼどうじにいいました。
「エイダンさんは、ビールだいじょうぶですか」
「はい、ビール、すきです」
「じゃあ、なまビール5つ」
やまだかちょうが、てんいんさんにちゅうもんしました。
すぐに、おおきなジョッキにはいったつめたいビールが5つはこばれてきました。
「じゃあ、こんしゅうもおつかれさまでした。かんぱい!」
「かんぱい!」
「ああ、きんようびのビールはさいこうだね!」
「ほんとうに。こんしゅうはいそがしかったですからね」
さとうさんも、リラックスしたかおでいいました。
エイダンさんは、すこしおどろいていました。オフィスでは、みんなきちんとしたふくをきて、ていねいなことばではなしていました。でも、ここでは、ネクタイをゆるめて、もっとカジュアルなふんいきです。
「じゃあ、りょうりをたのみましょう」
いとうさんがメニューをひらきました。
「エイダンさんは、なにかたべられないものはありますか」
「いえ、なんでもたべられます」
「よかった!じゃあ、いろいろたのみますね」
りょうりがつぎつぎとはこばれてきました。えだまめ、やきナス、あげどうふ、からあげ、やきとり。
「エイダンさん、やきとり、はじめてですか」
「はい、たべたことないです」
「じゃあ、これ、ぜひたべてみて。ねぎま、っていうんです。とりにくとねぎがこうごにささってるんですよ」
エイダンさんは、やきとりをひとくちたべました。
「おいしい!」
「でしょう?このみせのやきとりは、ほんとうにおいしいんです」
みんなでりょうりをたべながら、はなしがはずみました。しごとのはなし、しゅうまつのよてい、しゅみのはなし。
「エイダンさん、つぎ、なにのみますか」
「あ、ぼくは、またビールをおねがいします」
「じゃあ、びんビールたのみましょうか。ぼくはハイボールにしようかな」
しばらくして、びんビールとハイボールがはこばれてきました。
たなかさんはびんをてにとって、エイダンさんのグラスにビールをつぎはじめました。
「あ、ありがとうございます」
エイダンさんはすこしおどろきました。アメリカでは、みんなじぶんでじぶんののみものをつぎます。
「にほんでは、おたがいにのみものをつぎあうんですよ。おしゃく、っていいます」
いとうさんが、せつめいしてくれました。
「そうなんですか」
エイダンさんは、びんをとって、たなかさんのグラスにゆっくりつぎました。
やまだかちょうが、エイダンさんにはなしかけました。
「エイダンさん、とうきょうのせいかつには、もうなれましたか」
「はい。さいしょは、いろいろたいへんでしたけど、いまはすこしずつなれてきました。みなさんが、いつもしんせつにおしえてくれるので、とてもたすかっています」
「それはよかった。エイダンさんはにほんごがとてもじょうずですね」
「ありがとうございます。でも、まだまだべんきょうしなければなりません」
「けんきょでいいですね。でも、ほんとうにがんばってますよ。わたしたちも、エイダンさんといっしょにはたらけてうれしいです」
やまだかちょうのことばに、エイダンさんはこころがあたたかくなりました。
じかんがたつのははやく、きづくと、もう9じをすぎていました。
「そろそろ、おひらきにしましょうか」
やまだかちょうがいいました。
「じゃあ、おかいけいおねがいします」
やまだかちょうが、てんいんさんをよびました。
かいけいのとき、エイダンさんはさいふをだそうとしましたが、やまだかちょうがてをふりました。
「きょうは、わたしがだしますよ。かんげいかいみたいなものですから」
「でも…」
「いいんです。つぎのきかいに、みんなでわりかんにしましょう」
「ありがとうございます」
いざかやをでると、そとはすこしすずしくなっていました。
「きょうは、ほんとうにたのしかったです」
エイダンさんがいいました。
「こちらこそ。また、のみにいきましょう!」
たなかさんがこたえました。
「はい、ぜひ!」
えきまでいっしょにあるきながら、エイダンさんはおもいました。
しごとのときは、みんなまじめで、すこしきょりをかんじていました。でも、きょうののみかいで、みんなのちがういちめんがみえました。えがおではなして、じょうだんをいって、リラックスしていました。
えきで、みんなとわかれました。
「おつかれさまでした!またげつようびに!」
「おつかれさまでした。またらいしゅう!」
かえりのでんしゃのなかで、エイダンさんはまどのそとをみました。とうきょうのよるのけしきが、いつもよりすこしあかるくみえました。
「つぎののみかいも、たのしみだな」
English Translation
Friday afternoon, 5 PM. Aidan had finished this week's work and was about to close his computer.
At that moment, Tanaka-san from the desk next to him called out.
"Aidan-san, do you have any plans today?"
"No, not particularly..."
"Great! Today, our department is having a nomikai. Would you like to join us?"
Aidan thought for a moment. He had heard the word nomikai before. But he had never participated in one yet.
Aidan answered.
"Yes, I'd love to join!"
"Awesome! Then let's meet at the lobby on the first floor at 6 o'clock."
6 PM. Aidan went down to the lobby on the first floor. Tanaka-san, Sato-san, Ito-san, and Section Chief Yamada were waiting.
Everyone headed to an izakaya near the station.
When they entered, a staff member said energetically,
"Welcome! How many people?"
"Five people. We have a reservation under Yamada."
"Yamada-sama, right? This way, please."
They were guided to a tatami space. Everyone took off their shoes and sat on cushions.
On the table were menus and small oshibori towels.
"What shall we drink?"
Section Chief Yamada said.
"Draft beer for now!"
Tanaka-san and Sato-san said almost simultaneously.
"Aidan-san, is beer okay with you?"
"Yes, I like beer."
"Then, five draft beers."
Section Chief Yamada ordered from the staff.
Soon, five large mugs of cold beer were brought out.
"Well then, good work this week everyone. Cheers!"
"Cheers!"
"Ah, Friday beer is the best!"
"Really. This week was busy."
Sato-san also said with a relaxed face.
Aidan was a bit surprised. At the office, everyone wore proper clothes and spoke politely. But here, they had loosened their ties and the atmosphere was much more casual.
"Well then, let's order food."
Ito-san opened the menu.
"Aidan-san, is there anything you can't eat?"
"No, I can eat anything."
"Great! Then we'll order various things."
Dishes were brought out one after another. Edamame, grilled eggplant, fried tofu, karaage, yakitori.
"Aidan-san, is this your first time having yakitori?"
"Yes, I've never eaten it before."
"Then you should definitely try this. It's called negima. Chicken and green onion are skewered alternately."
Aidan took a bite of the yakitori.
"Delicious!"
"Right? The yakitori at this restaurant is really delicious."
While eating the food together, the conversation flowed. Work talk, weekend plans, hobby talk.
"Aidan-san, what will you drink next?"
"Ah, I'll have another beer, please."
"Then, shall we order bottled beer? I'll have a highball."
After a while, bottled beer and highball were brought out.
Tanaka-san picked up the bottle and began pouring beer into Aidan's glass.
"Oh, thank you."
Aidan was a bit surprised. In America, everyone pours their own drinks.
"In Japan, we pour drinks for each other. It's called o-shaku."
Ito-san explained.
"Is that so?"
Aidan took the bottle and slowly poured it into Tanaka-san's glass.
Section Chief Yamada spoke to Aidan.
"Aidan-san, have you gotten used to life in Tokyo?"
"Yes. At first, various things were difficult, but now I'm gradually getting used to it. Everyone always kindly teaches me things, so it's very helpful."
"That's good. Aidan-san, your Japanese is very good."
"Thank you. But I still need to study much more."
"It's good that you're humble. But you're really working hard. We're also happy to work with you, Aidan-san."
Aidan's heart warmed at Section Chief Yamada's words.
Time passed quickly, and when he realized it, it was already past 9 o'clock.
"Shall we wrap things up soon?"
Section Chief Yamada said.
"Well then, check please."
Section Chief Yamada called the staff.
When paying, Aidan tried to take out his wallet, but Section Chief Yamada waved his hand.
"Today, I'll pay. It's like a welcome party."
"But..."
"It's fine. Next time, we'll split the bill."
"Thank you very much."
When they left the izakaya, it had gotten a bit cooler outside.
"Today was really fun."
Aidan said.
"Likewise. Let's go drinking again!"
Tanaka-san replied.
"Yes, definitely!"
While walking together to the station, Aidan thought.
At work, everyone was serious and he felt a bit of distance. But at today's nomikai, he saw a different side of everyone. Talking with smiles, joking, relaxed.
At the station, they parted ways.
"Good work! See you Monday!"
"Good work. See you next week!"
On the train home, Aidan looked out the window. Tokyo's night scenery looked a bit brighter than usual.
"I'm looking forward to the next nomikai too."

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